[編集] 表語文字
表1 主な漢字辞典の収録文字数[要検証] 年(西暦) 辞典名 見出し字数
前14世紀- 甲骨文 (参考)[a] 約3,400?
前11世紀- 金文 (参考)[b] 約3,600?
100 『説文解字』 9,353?
227-239 『声類』 11,520?
543 『玉篇』 22,726?
751 『唐韻』 26,194?
1066 『類篇』 31,319?
1615 『字彙』 33,179?
1716 『康熙字典』 47,035?
1915 『中華大字典』 約48,000?
1960 『大漢和辞典』[c] 48,899?
1962 『中文大辞典』 49,888?
1986 『漢語大字典』 56,000余
1986 『漢語大詞典』 60,000余
a 「今昔文字鏡」収録数 (3,398字) によった。
b 『金文編』収録数 (3,552字) によった。
c 版および数えかたによって異同がある。詳細は大漢和辞典#大漢和辞典の親字数を参照。
ひとつの文字がひとつの語あるいは形態素を表す文字体系のことを表語文字(英: logogram)と呼ぶ。中国語では、ひとつの音節がひとつの形態素を表し、漢字はひとつひとつの文字が形態素を表している(わずかな例外はある)。したがって、漢字は完全な表語文字としては代表的なものである。表意文字とのちがいについては#表音と表意・表語の節を参照。
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表語文字に属する文字体系には、アナトリア文字(消滅)、エジプトヒエログリフ(消滅)、漢字、契丹文字の一部(消滅)、楔形文字の一部(消滅)、古彝文字(現代では使われない)、古壮字(現代では使われない)、女真文字(消滅)、西夏文字(消滅)、チュノム(現代語の表記には使われない)、トンパ文字、マヤ文字(滅亡)、などがある。
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表語文字体系のなかには、表音用の文字も持っていて、表語用の文字と表音用の文字とを組み合わせて語の意味と発音の両方を表そうとするものもある。また、複数の文字を並べてより複雑な意味を表そうとするものもある。エジプトヒエログリフやトンパ文字などがこれにあたる。いっぽう、漢字やそれに影響を受けた表語文字体系では、この方法を会意や形声といった手法に発展させたため、言語の語や形態素のひとつひとつを文字で表すことができるようになった(詳細は六書およびその関連項目を参照)。後者のように、すべての文字が形態素とその発音の音節を表す文字体系を、特にロゴシラバリー(英: logosyllabary)と呼ぶ研究者もいる[14]。
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表語文字の特徴として、文字体系に含まれる文字の総数を確定しがたいということがある。たとえば、漢字はその誕生以来文字数を増やしつづけてきたし、今日でも新しい文字が生まれ続けている(#表1参照)。また近年は、漢字をコンピュータで利用するための文字コード(符号化文字集合)の編纂がたびたび行われ、そのための典拠調査を行うたびに収録漢字数は増加している。
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[編集] 系統
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[編集] 総説
[編集] 淵源
文字は、当初ピクトグラム(絵文字)から発達した象形文字であったという仮説が有力である。しかし、ピクトグラムから象形文字への移行を裏付ける証拠はほとんど発見されていない。
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他の説を唱える研究者もいる。en:Denise Schmandt-Besserat は、中東一帯の遺跡から発見される粘土製証票(トークン)が文字の起源となったと主張する[15]。商取引の際、商品ごとに形の異なる証票を用い、証票の数で取り引き数を表す。取り引きごとの証票をまとめて粘土の玉に埋め込み、取り引きの証明とした。後に粘土玉の表面に、証票の形と数を印すようになった。つまり、商品を証票で表し、さらに証票とその数を記号で象徴するようになった。これが文字の(少なくとも、この地域でその後使われるようになった楔形文字体系の)起源であるとする説である。
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しかし、この説への批判も多く、現在の主流の見解では、トークンは文字の誕生の一要因であったが、トークンのみですべてを説明することはできないとされている。また、文字が単一の起源から発生したのか、それとも地球上の複数の地域で独立に文字が誕生したのかについては、いまだに一致した結論は出ていない。
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[編集] 借用と発展
現在までに発見されている文字体系は、あまり多くないいくつかの系統に分類できる。つまり、現在知られる文字体系のほとんどは、ほかの文字体系を借用し、発展させて成立したことがわかっている。借用はさまざまなレベルで行われるが、それぞれの系統には#分類の節で述べたさまざまな類型に属する文字体系が現れる。また、個々の文字体系の中でも、さまざまな造字手法を発展させてきた。
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文字という着想
事実や意志の伝達を目的とし、耐久性のある媒体に記され、言語と関係した記号の体系、という着想。これには、一定の種類の記号だけを使うことも含まれる。この着想は単一の起源を持つと考える研究者もいるが、作業仮説の域を出ない。現在でも、この着想に基づいて計画的に文字体系をつくり出そうとする試みは多い。
書記媒体
書記媒体(粘土に楔形の記号を記す、布や紙に墨と筆で書く、など)を借用して、異なる文字体系を表記するのに用いた例は歴史上多い。
線条性
線条的に書くという方式の発展。初期の表語文字には記号の順序からは読む順序が判然としないものがあるが、後の文字体系では、区切り記号を導入して文を語に分析して順番に表記したり、文字や字母を単位として線条的に表記することが一般化した。
書字方向
かつては、ある行から次の行へ移ると書字方向を反転させて書き進めることがしばしば行われた。これをブストロフェドン(希: βουστροφηδ?ν。牛耕式とも)と呼ぶ。文字の需要が増大してより速く大量に書くことが求められるようになるにつれ、各行を一定方向に書くことが増えるが、右から左へ、左から右へ、上から下へなどのどの書字方向を選ぶかは、文字体系によって異なる。借用の際に書字方向を変更したため、文字の図形を反転(左右の変更の場合)したり、90度回転(左右と上下の変更の場合)した例もある。
会意と形声
表語文字では、複数の記号を組み合わせてより複雑な意味を表す手法が発展した。たとえばエジプトヒエログリフで、「書く」を意味する文字と「人」を意味する文字を組み合わせて
(書記)を表す。「人」の文字はこの語の発音とは何の関係もない。このように、意味範疇を限定するための記号を限定符(英: determinitive。決定詞とも。漢字では義符とも)と呼ぶ。また、限定符に発音を表す文字(音符。漢字では声符とも)を付加して表したい語を特定することもある。エジプトヒエログリフの場合、明確さを向上させるために複数の限定符や音符を付加することもある。漢字ではこの手法はより体系化されており、それぞれ会意および形声と呼ばれている。
音の借用
表語文字から特定の文字をいくつか借用して、その文字の表す意味から類推される発音を表すものとして使う。つまり、表語文字を借用して表音文字として使うのである。たいてい、元の語は1音節ないしは複数の音節で発音されるので、借用の際には語頭の子音や音節だけを表すものとみなす。これを頭音法 (英: acrophony。頭字法とも)と呼ぶ。たとえば、エジプトヒエログリフでは、「脚」を表す文字
(発音は br)を b の音を表すのにも使うし、万葉仮名や平仮名では、漢字の安をあの音を表す文字に転用している。
すでにある言語で使われている表音文字を借用して、別の言語を表記するものとする例は非常に多い。この場合、元の文字体系では表せない発音があったり、借用先の言語にはない発音を表す文字があったりする。そこで、似た発音の字母を変形したり、識別記号(ダイアクリティカルマークなど)を付加したりして文字体系を拡張する。たとえば、ラテン文字の C は当初 k と g の音両方を表したが、後に2つの音が区別されるようになったため、C に鈎を付けて G とした。場合によっては、必要ない字母をまったく別の音の表記に転用することもある。フェニキア文字は子音のみを表記するアブジャドだったが、ギリシア語表記に借用された際にギリシア語表記に必要のない字母が母音の表記に転用され、アルファベットとなった。このような事情から、文字体系の字形が似通っていても個々の文字の表す発音は大きく異なることがある。